VRM | Data for Me
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前回投稿のパーソナルデータに関する記事は多くの方に読んでいただくことができました。今回はパーソナルデータの続編として更に踏み込み、前記事では紹介出来なかった消費者主導でCRMと反対の概念であるVRM(Vendor Relationship Management)と、それを実現するためにパーソナルデータの流通を個人がコントロールできるツールのPDS(Personal Data Store)についてご紹介します。 11月29日、日本経済新聞に「民間の個人情報売買解禁へ 政府、新事業創出を後押し」という記事が掲載されました。企業が保有するパーソナルデータを”匿名化”した上で(個人情報ではなくなり)売買することができるというルール作りを来年度以降行い、個人情報保護法の改正を行う、というインパクトの大きい記事でした。 実際にはこの記事は誤報で、ガイドライン策定(ルール作り)は行うが、法改正については検討にも至っていないとのことでしたが。 何にせよ、経済界にとっては大きな期待があると思いますが、この企業間でのパーソナルデータの売買には、個人情報保護やセキュリティの観点とは別に2つのデメリットがあります。 一つ目は”パーソナルデータの流通制御が出来ない”ことです。匿名化されているとはいえ、自分のデータがどこに流れどのように活用されているか見えないことは大きな不安になるでしょう。個人は、各々のパーソナルデータの流通(どのデータをどの第三者に提供するか)をコントロールすることができません。 二つ目のデメリットは、”ユニークIDで複数データソースの紐付けが出来ない”ことです。企業間でパーソナルデータを売買するということは、それぞれの企業が管理しているIDが個人識別コードとなるので、個人がOpenIDで対応した複数サービスを利用していない限り、それぞれの企業のデータを紐づけることが出来ないのです。 上記二つのデメリットですが、海外では既に解消するための動きが存在します。そのキーワードになるのが、最初に提示した”VRM”と”PDS”です。 "VRM(Vendor Relationship Management)"とは? CRMやSocial CRMは既に一般的な言葉ですが、VRMという言葉はこれまで聞いたことがない人がほとんでしょう。もしかすると、TechChrunchを読まれている方であればご記憶にあるかもしれません。 オープンソース擁護者でジャーナリストのDoc Searls氏が執筆し今年5月に発売された”The Intention Economy”に関する記事の「あのDoc Searlsが「注意の経済」から「意思の経済」への大転換を説く」です。 Attention EconomyからIntention Economyへの転換とは、これまで売り手側がビッグデータを解析して顧客の心理や行動を推定し、一方的に広告やプロモーションで買い手に注意を引き起こす経済から、買い手が個々のパーソナルデータ(=スモールデータ)の流通を管理し、買い手が中心となって売り手との関係を構築する経済に移行していく、ということです。 その買い手が主導で、売り手との関係構築を実現するのが”VRM”と呼ばれるものです。 Doc Searls氏は自身が中心となり、2006年にハーバード大学院のthe Berkman Center for Internet & SocietyでProjectVRMというプロジェクトを開始しており、6年経った今年、満を持しての出版となっています。ブログはこちら。 CRM、Social CRM、VRMの違いについてはGartner Customer 360 Summit 2010で発表された4象限の図が分かりやすいかもしれません。 VRMを実現するツール"PDS(Personal Data Store)"とは? ProjectVRMと同じように、消費者個人がパーソナルデータをコントロールできるようにという考えから、2010年に設立されたのがPersonal Data Ecosystem Consortiumです。 このコンソーシアムには、世界中からPDS(Personal Data Store)サービスを提供する30以上ものスタートアップが参加しており、この中には前回の記事にも登場した英国のmidataプロジェクトに参画しているMydexも含まれています。他に良く目にする名前としてはpersonalやKynetx、Singlyでしょうか。 これらのPDSを提供する組織・人のことを、Doc Searls氏は著書の中で"4th Party"と呼んでいます。サードパーティという言葉は良く聞くと思いますが、この第4者団体とはどういう立場なのかを説明しているのがこちらの記事です。要するに、3rd Partyは消費者から見るとベンダー側の立場であり、4th Partyは消費者側に立った団体となります。 それでは、PDSとはどういうツールなのか?という話に入っていきます。 実は4th Partyが提供するツールのことはPersonal Data Storeだけでなく、Personal Dataに続く単語がServiceやVault、Locker、Cloudなど多く存在していますが、恐らく最も利用されている言葉がStoreなので、とりあえずはPersonal Data Storeとしてこの記事では紹介しています。 この記事の最初の方で、企業間(B2B)でのパーソナルデータの売買には2つのデメリットがあると指摘しました。”パーソナルデータの流通制御が出来ない”ことと、”ユニークIDで複数データソースの紐付けが出来ない”ことです。これらを解決するのがPDSです。 システム的・技術的なことを抜きに、とてつもなく簡単に説明すると下図のようになります。 現状では、企業間で匿名化されたパーソナルデータが勝手に売買や提供がなされるため、消費者は自分のデータがどこに渡ってどのように使われているのかを知ることはできません。 しかしながら、企業間に消費者とPDSが入ることによって、企業が保有するパーソナルデータがまずは個人に戻され、それらを分析できることはもちろんですが、そこから更に提供したいVendorとそこにどのデータを提供するのかをコントロール(アクセス権の付与)することができるようになります。もちろんそれらは個人IDで紐付けがされているため、B2Bでの2つのデメリットを解消することができます。 更にPDSの機能の一つに、パーソナルデータを個人間(P2P)でシェアするPDX(Personal Data Exchange)というものもありますが、それはまた別の機会に。 今後、PDSの市場はどのようになっていくのか 上記に出てきたPDSのスタートアップの一つであるMydexの設立者であるWilliam Heath氏は、パーソナルデータに関するコンサルティングとマーケティング会社であるCtrl-Shiftの設立者でもあります。 そのCtrl-Shift社が2012年4月に、英国におけるPDSの市場調査レポートを発表しました。そのレポートによると、2016年には10億ポンドまで成長するのではと書かれています。 PDS市場が成長するためのキーとなるのが、「consumers(消費者)」「corporates(組織)」「entrepreneurs(起業家)」「technology(テクノロジー)」「legislation(法律)」の5つとなっており、これらのうち一つでも欠けるとPDSの市場が成長することはできません。 消費者がその利便性を知り、データを提供する組織がデータを戻すことによって得られるメリットを知り、PDSツールを提供する企業と投資家が集まり、「M2M」や「Internet...