クルマのデータは誰のもの?消費者の意識向上を目的としたキャンペーン「My Car My Data」

クルマから生成されたデータは誰のものなのか?IoTなどのセンシングデータと同様に、その生成されたデータの所有権の在り方は簡単に決まるものではありません。

そんな中、ドライバーの運転データに基づいて保険料を算出する自動車保険であるテレマティクス保険や、ビッグデータとして渋滞情報や危険箇所の情報を割り出すためにプローブデータが活用されたりと、クルマから発生するデータを有効活用したサービスが続々と出てきています。

「スマートドライブ」のような専用デバイスを装着することで自分の運転特性を分析できる消費者向けのサービスも出てきていますが、一方でそれらのサービスで利用されている以上のプライバシー性の高いデータまでメーカー側が取得可能なことはあまり知られていません。

総務省では、電気通信分野に関連するプライバシー保護について検討することを目的として、2015年11月と12月に「改正個人情報保護法等を踏まえたプライバシー保護検討タスクフォース」を開催し、第1回ではKDDI総研さんから「コネクテッドカーにおけるプライバシー保護について」の報告があり、「どのようなデータが存在するのか」「どのような課題があるのか」「何を検討しなければいけないのか」といった情報が少ないスライドでまとめられています。

 

国際自動車連盟による啓蒙促進キャンペーン「My Car My Data」

2015年11月、国際自動車連盟(FIA)の欧州/中東/アフリカ地区を統括する FIA Region I は、ドライバーのプライバシー権やテレマティクスサービス事業者を選択する自由などについて啓蒙促進するキャンペーン「My Car My Data」を開始しました。

キャンペーンページMy Car My Data

 

EU では 2018 年 4 月以降に新たに販売される全ての自動車に自動緊急通報システム「eCall」 の搭載が義務付けられるため、FIA Region I は以前から自動車データを利用したテレマティクスサービスにおけるデータ保護を欧州議会に対する働きかけをしていました。

FIA Region I はコネクテッドカーにおいて、EUで2025年までに以下の3つの消費者原則を保証すべきと提唱しています。

  • データ保護 
    自動車データへのアクセスに対してユーザーの同意を義務付け、どのようなデータが発生し利用されているかといった情報を得られるようにデータをコントロール可能なプライバシーを保護するフレームワークを提供するべきである。
  • 選択の自由
    ドライバーには自身が好きなもしくは必要なサービスレベルのプロバイダーを様々な中から自由に選択する権利があり、メーカーは負荷なくプロバイダーの変更が出来るようにしなければならない。
  • 公平な競争
    自動車データは特定のプロバイダーにロックインされることなく、標準化されたオープンでセキュアなプラットフォームを通じてユーザー自身や許諾を得たプロバイダーがデータにアクセスでき、サービスの公平な競争が行われなければならない。

FIA Region I はクルマからどのようなデータがトラッキング及び送信されているのか、ガソリン車と電気自動車で調査を行った結果を公表しました。

トラックされている
データ
ガソリン車 電気自動車
ドライバー プロファイル
  • ドライビングモード別の使用時間
  • 急ブレーキによりシートベルトが締まった回数
  • 走行回数とkm以上走行した量
  • ドライビングモード
  • どこでどのようにチャージされたか
自動車の位置
  • ナビに最後に入力された目的地
  • 過去100箇所の駐車した位置
  • ドライバーがどこで他の交通手段(電車/バス)に接続したか
メンテナンス情報
  • 最大エンジン回転数
  • 走行距離
  • ライトの状態
  • バッテリーチャージの質
  • 走行距離
  • 充電プラグの利用
コンタクト情報
  • モバイルフォンから同期された個人情報

上記のようなプライバシー性の高いデータが知らずのうちにメーカーが収集出来るようになっており、FIA Region I はメーカーに対して全ての自動車の各車種でどのようなデータがどのような目的で収集/処理/蓄積/外部送信されているかの詳細なリストを、消費者が容易にアクセスできるように公開することを要求をしています。

そしてドライバーには、安全なオペレーションに絶対に必要なデータ以外を停止するオプションがあるべきで、そのメーカーにロックインされずにオープンな競争市場の中で最低価格やイノベーティブなものなど様々なプロバイダーによるサービスにアクセスする自由があるべきと説いています。

 

消費者のコネクテッドカーとデータ共有に対する意識は千差万別

また、FIA Region I はEUの12カ国12,000人に対してオンラインで調査した結果をインフォグラフィックと詳細なレポートにまとめています。

インフォグラフィック

レポートリリースページ Consumers speak out on data protection with connected cars
レポート「WHAT EUROPEANS THINK ABOUT CONNECTED CARS」

同じEU内においても、国によってコネクテッドカーに対する認知と正しい定義を答えられた割合が異なり、有名な自動車メーカーが存在するフランス/ドイツ/イタリアが高かった一方、意外なことにイギリスがチェコやデンマークと共に低い結果となっています。

特筆すべき結果として、90%がクルマから生成されたデータはクルマのオーナーのものであるべきありと答え、95%がコネクテッドカーのデータを保護する規制が必要と答えています。

しかしながら、セキュリティやコネクテッドカーへの無関心層も一定数存在し、アンケート結果から縦軸にセキュリティへの関心、横軸にコネクテッドカーサービスへの関心を置いたマトリクスによって6つのグループに分けています。

  1. Enthusiasts (12%)
    コネクテッドカーやその技術に詳しく、それによって享受できる機能を使いこなしてドライブ体験をより良いものにしたい。そして、セキュリティや個人情報の公開には意識がありつつも自動車データの共有はしていきたい。
  2. Connected & Relaxed (20%)
    コネクテッドカーをインターネットに常時接続するためのツールとして考え、それによって使える機能は出来るだけ使い、セキュリティに対する意識はあっても、ネットに接続されていることによって享受できる機能をより重要視している。
  3. Interested but Hesitant (25%)
    最も年齢層も割合も高いグループ。平均以上にインターネットやデバイスを使いこなしておりコネクテッドカーの機能に興味はあるが、それ以上にデータ保護に対する意識のほうが高く、データはあまり共有したくない。
  4. Distant (19%)
    他のグループより年齢層が高く、自動車そのものへの興味が低いのでコネクテッドカーの購入意思も低いが、興味はある。燃料消費の削減や交通渋滞の回避という目的には最も興味を示し、故障やリモート診断のためならデータ共有しても良い。データセキュリティへの意識は低いが、データへのアクセスは時間制限であるべきという考えは支持する。
  5. Anxious and Not Interested (14%)
    コネクテッドカーの機能では運転効率化と安全以外には興味は無く、車内でのインターネット接続にも全く興味は無い。データセキュリティへの意識は高く、コネクテッドカー購入時のポリシーは詳細まで全て読み、故障時以外ではデータ共有はしたくない。乗車ごとに許可を選択したい。
  6. Opposed (10%)
    他のグループより学歴が低く(原文ママ)、日常生活であまりネット接続していない。自動車購入時もコネクテッドカーには興味なく、平均より少しデータセキュリティへの意識が高く、コネクテッドカーの機能も使う気がないし、データも共有したくない。

このように、積極的にデータ共有してコネクテッドカーの恩恵を受けたい層から全く受けたくない層が幅広くいる中で、今後全てのクルマがネット接続された場合、それによって生成されるデータを利用する選択権はそのクルマのオーナーにあるべきではないでしょうか。自身が享受したい機能に必要なデータ共有のみされ、それをユーザーが分かるように提示されていれば、誰もが安心してコネクテッドカーを利用できるでしょう。

また、FIA Region I が提唱する3つの消費者原則にもあるように、自動車データが特定の企業にロックインされずに、ドライバーの意志によって様々な企業が利用できるようになれば、現時点では思いもしない革新的なサービスが出てくるかもしれません。そのためには、まずは消費者におけるコネクテッドカーとそれが生成するデータについての意識向上が重要で、日本の自動車メーカーもその責任は小さくないでしょう。

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